屋根を直すならカバー工法と葺き替えはどっちが得策?屋根工事のプロが徹底解説。

屋根工事カバー工法1

屋根カバー工法とは

屋根カバー工法の基礎知識

屋根カバー工法とは、既存の屋根の上から新たな屋根材を被せてカバーする屋根工事です。そのため、古い屋根の上に新しい屋根が乗っている、2重屋根のイメージになります。

既存屋根と新規の屋根の組み合わせによって、カバー工法が可能かどうかの制限はありますが、詳しくは後述します。主に費用を抑え工期を短くできる工法として普及していますので、まず簡単に施工手順をご紹介します。

ほとんどのケースで仮設足場が必要になるため、はじめに足場を設置し、その後は以下のような手順になります。

1.既存屋根の棟や役物、各下地の撤去
まず、屋根材の頂上にある棟と、その下地材の板を撤去します。

2.防水シート(アスファルト系ルーフィングなど)を貼る
既存の屋根材の上から、新しい防水シートを貼ります。この際屋根面に不具合がある場合はできる限り修復し、シートの貼り付けに差支えないようにします。

3.新しい屋根材を取り付ける
防水シートの上から新しい屋根材を並べ取り付けます。平面はシンプルなので簡単ですが、軒先やケラバの納まりは加工が必要になります。

4.棟など各役物を取り付ける
新しい棟下地、棟板金を取り付けます。

5.コーキング仕上げ
壁取り合いなど接合部の隙間をコーキングで塞ぎます。ただしコーキングの耐久性は数年ですので、棟や水切りの内部にアスファルト系フェルトなどの防水シートで止水をします。

6.廃材・仮設の撤収・片付け
しっかり撤収・片付けまで行ってこその工事です。

といった手順になります。
どうしても専門用語が多くなりますが、おおまかにいうと、機能を失った古い屋根を残したまま新しい屋根を被せる、という工法です。

葺き替え工事との違い

屋根工事カバー工法2

葺き替え工事とは、既存の屋根材を解体撤去してから新規の屋根材を施工する工法です。

従ってもっとも大きな違いは、カバー工法の場合は「古い屋根が残っている」という点になります。

古い屋根が残るということは、具体的にどのような違いが生じるのでしょうか。

違い①費用を抑えることができる(メリット)

葺き替えに比べて費用を抑えることができます。なぜなら、既存の屋根材を解体・撤去・処分する費用がいらないからです。

違い②工期が早くなる・施工性が良い(メリット)

葺き替えに比べて工期が短くできます。なぜなら、既存の屋根材を解体・撤去・処分する期間が省略できるからです。通常の住宅の屋根の葺き替えの工期は1週間から10日ほどかかることが多いですが、2〜3日短縮できます。

さらに、古くなった屋根材を解体撤去する際の騒音やホコリなどが発生することがなく、葺き替えに比べて近隣への配慮や屋内の養生が減ります。

違い③断熱性・遮音性が向上する(メリット)

既存屋根の上に新しい屋根が乗りますので、屋根材が二重になります。それによって断熱性が上がり、同時に外部の騒音や雨音などが軽減されることで遮音性も上がります。

違い④屋根が重たくなる(デメリット)

古い屋根が残り、新しい屋根の重さが加算されますので、葺き替えと比べて屋根は重たくなります。重たくなると、その分建物への負担は増え、重心も上がりますので、耐震性は低下します。既存の屋根が瓦などで重いケースでは、さらに新しい屋根で重量を加算することになりますのでカバー工法はお勧めできません。ただし、軽量の屋根であればその分負担も軽減されます。

違い⑤損害保険の対象外になることがある(デメリット)

災害などで破損したり雨漏りが出た場合、加入している火災保険や共済などを利用して屋根を修繕することがあります。自然災害によって被害を受けた際の現状復旧のために保険を利用できるのが通常ですが、カバー工法は対象外になることがあります。

屋根カバー工法に関するQ&A

屋根工事カバー工法3

どんな屋根でも対応できる?

既存の屋根も、新規の屋根も、どんな屋根でもカバー工法で対応できるわけではありません。

既存の屋根が瓦屋根の場合、表面が波型になっているため、防水シートや新しい屋根材を取り付けることが困難です。また、重量の問題もあります。重い瓦屋根を残してさらに屋根を乗せるとなると、かなりの重さになってしまいますので、建物への負担が大きく、耐震性も下がってしまいます。

カバー工法では、既存の屋根も新規の屋根も、スレート、金属(板金)、アスファルトシングルなどの軽量な屋根材を推奨しています。

また、屋根材とは別に注意が必要なのは既存の屋根の下地の状態です。既存の下地が新規の屋根にとっても下地になります。カバー工法では既存の屋根材を撤去しないため、下地が傷んでいても原則交換することができません。下地の劣化が著しいまま新しい屋根を乗せることはできません。著しく腐食しているなど強度が下がっている場合には取り換えが必要になりますが、それが可能な場合と不可能な場合があります。下地の傷みは確認が難しいため、プロでも築年数や既存の屋根の状態などからある程度推測して施工を進めるしかありません。

耐久性は?

カバー工法した場合の耐用年数は、採用した屋根材によります。

スレート屋根なら塗り替えの目安は10年前後です。葺き替えまでの耐久性は20年から30年です。

ガルバリウム鋼板の屋根なら塗り替え目安は塗料によりますが15年前後です。葺き替えまでの耐久性は30年から40年です。

アスファルトシングルであれば塗り替え目安は10年程度です。葺き替えまでの耐久性は20年前後です。

また、一度カバー工法を施した屋根に再度カバー工法を施工するのはおススメできません。軽量の屋根でも3層となるとかなりの重量になってしまいます。耐用年数がきたら葺き替えを検討しましょう。

古い屋根はどうなるの?

新しい屋根の下に残された古い屋根はそのまま残ることになります。茅葺き屋根のケースでは時々屋根から茅が舞い落ちてきたりすることもあります。それ以外のケースでは不具合が起こる可能性は低いです。ただし新規の屋根が雨漏りを起こした場合は、浸水した雨水が古い屋根に落ち、屋根や下地に悪影響が出ることはじゅうぶん考えられます。カバー工法を施す前の屋根が雨漏りしていた場合は、同じ箇所から雨漏りしてしまう可能性があります。

湿気が溜まったりしないの?

カバー工法では屋根が2重になるため断熱性が上がります。小屋裏に湿気が溜まり、結露が発生するとしても新しい防水シートの上に落下しますので、しっかり軒先で排水できる限り大きな問題はありません。

ただし、既存の屋根材と下地が水分を含んでいる場合、しばらくは小屋裏側に結露が起こる可能性もあります。

小屋裏は湿気が溜まりやすい場所ではあります。その湿気対策としては外壁の妻部分に換気口を設置したり、屋根に換気棟を設置することで、自然の風や人工の電力で湿気を排出し、結露の発生を防止することができます。

また、防水シートを湿気を逃がすタイプの透湿系ルーフィングにすることで結露を防止することもできます。

アスベストが使用されたスレート屋根でも対応できる?

カバー工法はアスベストが使用されたスレート屋根でも対応できます。2004年以前に施工されたスレート屋根には、有害とされるアスベストを含んでいる可能性があります。アスベストを含むスレート屋根を撤去処分するには手間も費用も掛かります。カバー工法ならそれを回避して屋根のリフォームができます。一部、限られた範囲でのアスベストの解体撤去・処分が発生しますが、ほぼ廃材を出さないで簡単に施工することが可能です。

屋根カバー工法の費用相場

費用相場画像

カバー工法の費用は、使用する屋根材や屋根面積・形状によっても異なります。

一般的な戸建て住宅での相場では、70万から150万程度になることが多いです。

屋根カバー工事の費用は、現地確認と屋根の実測を行った上で算出する必要があります。

使用する新規屋根材の選択によっても費用は変わりますが、現在の住宅の条件によって変わるポイントは以下の通りです。

・屋根の形状・勾配
同じ面積でも、屋根の形が複雑であったり、1階部分に独立した屋根がある場合などは手間と材料ロスがかかりやすく、割高になります。屋根の形状は、片流れ、切妻、寄棟、入母屋の順に費用が割高になっていきます。また、勾配が急なケースでは、屋根面の足場が必要になり、葺き手間もかかるため、割高になります。

・下地の状態
下地の状態が悪いケースでは、取り替えなければならないことがあります。場合によってはカバー工法が施工できないこともあります。

・立地条件
建物の周辺が狭かったり、入り組んでいると、材料の搬入がしにくく、割高になることがあります。前面道路が広く、敷地に余裕があり駐車しやすいほど作業性も良いといえます。

・建物の階数
建物が3階以上と高くなるほど追加の足場や材料の組立工事費用や搬入搬出費用がかかります。2階建てを基準にして、平屋であれば割安に工事できます。

スレート、アスファルトシングル、ガルバリウム鋼板の屋根の3パターンで比較した場合、費用が安いのはアスファルトシングル、次にスレート、そしてガルバリウム鋼板となります。ガルバリウム鋼板の屋根は塗装のグレードによっても費用に差があります。ただし、費用が高い屋根材ほど耐用年数が長く、メリットも増えてコストパフォーマンスが上がる傾向にあるため、長期的に考えれば得になることが多いと言えます。

まとめ

まとめ画像

カバー工法は費用が抑えられたり工期が短くて済むなどメリットも多いのですが、注意が必要なポイントもあります。

たとえば下地が悪いと屋根が飛ばされたり雨漏りも起きかねません。今ある下地の状態のままカバー工法を施工して本当に問題がないのか、専門の業者によく相談し確認することが大切です。

屋根の重量も重要なポイントです。カバー工法で瓦を施工するのは耐震性などを考えてもかなり危険な選択になります。

また、屋根が2重になることで雨漏りの原因が複雑になりわからなくなることもあります。

カバー工法は効率的で費用対効果が高いといえますが、このように失敗するリスクもあります。

信頼できる屋根工事業者としっかり相談するようにしましょう。

お問い合わせ、ご相談はこちら(お問い合わせページへ)

髙橋 直浩

株式会社 高橋ブリキ工房
代表取締役社長

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