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屋根工事で用いられる役物とは?
屋根の工事において、非常に専門用語が多く、分かりづらいのが役物に関する説明です。「この屋根は寄棟タイプなので剣先が…。切妻タイプなので棟巴が…。」と説明されても何のことかわからない施主様も多いと思います。
当社でも説明する際に、できる限り分かりやすくお伝えするよう努めていますが、どうしても口頭では説明しきれない部分もあるため、本記事では「役物」に関する解説をまとめました。
役物とは?
屋根工事の役物とは、屋根面以外に用いられている部材のことを指します。代表的なものに鬼瓦がありますが、役物には特殊な形をした飾り目的のものだけではなく、機能を担っているものもあります。
また、役物は屋根の軒先や隅、棟といった先端部分に多く用いられます。屋根工事全体でいえば、そのほとんどは屋根面で占められており、役物の割合は極めて少ないように見えます。しかし施工の工程においては、現場に合わせて加工することが多く、手間もかかり、職人の技術の差が出やすい部分とも言えます。
役物の役割と効果
防水
役物の役割でもっとも大きいのが防水です。屋根面がぶつかる部分や、部材の先端部分は雨水の浸水がしやすいため、形状を変更するなどして「納める」ことで防水しなくてはなりません。屋根形状が複雑になるほど接合部分や先端部分が増えるため、役物も多くなります。逆を言えば、複雑な屋根であっても役物をしっかり施工することで十分な防水効果を得ることができます。
部材の固定
部材の先端部分は台風や強風などの影響をもっとも受けやすい部分です。破損したり飛散させないために、部材を固定することも役物の大切な役割のひとつです。
デザイン
鬼瓦や隅部(くまべ)のように外観上目に留まりやすい位置には、デザインを考えて役物を設置することがあります。形状やカラーを変えて目立つようにすることもできますし、シンプルなデザインにすることもできます。
屋根工事で用いられる役物の種類と用途
屋根の材質や形状によって必要な役物は変わってきます。
主な屋根の形状には以下のタイプがあります。
①寄棟(よせむね)タイプ
主棟と隅棟で構成されます。屋根は原則として4面になりますが、例外的に片側のみ切妻タイプになることもあります。
②入母屋(いりもや)タイプ
主棟と隅棟と妻壁で構成されます。妻壁は、妻部分に三角形の壁ができることです。
③切妻タイプ
主棟のみで構成されます。原則2面の屋根になりますが、片側のみ違うタイプになることもあります。
棟包(むねつつみ)
棟とは、異なる勾配方向の屋根面がぶつかるラインをいいます。一般的には頭頂部分に多いところで、主棟とか大棟といいますが、寄棟屋根では隅棟が加わります。棟の部分では屋根材をつなげることができないため、上から包むようにカバーする必要があり、その部材と施工を棟包といいます。
棟包みは形状と厚みに合わせて下地を施工し、飛ばされないようにしっかりビス止めする必要があります。塗装のメンテナンスの際は棟も一緒に塗装しましょう。
銅板の屋根などのケースでは、隅棟ではなく屋根材と同じ寸法で90度にカーブさせる回し葺きが使われることもあります。
剣先(けんさき)
寄棟タイプと入母屋タイプの屋根形状のケースで、隅棟の先端部分に設置されるのが剣先です。隅の90度の角度に合わせて加工し、棟包みの先端として設置されます。
瓦でいうと隅の鬼飾りと隅角にあたります。切妻タイプの屋根では隅棟がないため剣先もありません。
唐草(からくさ)
唐草とは屋根の端部から一段下がった面のことで、軒先とケラバ側にあります。軒裏まで水が回らないように水切りとして設置します。ケラバとは軒先ではない妻側の勾配なりにできる端部です。切妻タイプや片流れタイプの屋根では軒先とケラバがあります。
屋根材の端部のすぐ下を防水して包んでおくことで、水切りの役割をするとともに、下地の露出を隠す役割をしています。
寄棟タイプの屋根は全面が軒先になるためケラバはありません。
棟巴(むねともえ)
主棟の両端部に設置されるのが棟巴です。瓦でいうと鬼瓦とその直下の拝み巴にあたりますが、板金の場合は棟包みがそのままケラバまで包んで掴みこむシンプルな仕上げが一般的です。
切妻タイプと入母屋タイプにあり、寄棟タイプにはケラバがないため棟巴はありません。
雨押え(あまおさえ)
雨押えとは、屋根と壁との取り合いに水切りを設置し防水するためのものです。壁から流れ落ちる雨水で雨漏りしやすい箇所になるので、水の流れを考えて雨水の侵入を防ぐ加工が必要になります。1階部分に屋根があるケースが多くなります。
ケラバ包み(けらばつつみ)
ケラバ包みとは、ケラバ部分を板金で防水することです。屋根面の終点から妻側を含めて軒裏側まで巻き込む形になります。妻側は風の影響を受けやすい部分でもありますので、破風板の上部まで包み込むことで固定しています。
切妻タイプや入母屋タイプにあり、寄棟タイプにはケラバがありません。
鼻隠し(はなかくし)
鼻隠しとは、軒先の見付部分の厚みに当たる箇所を板金で防水することです。軒先のほとんどの雨水は軒先唐草で切ってしまいますが、小雨や風があるときなどは一段下の鼻隠しまで水が回ることもあります。垂木がない時に雨樋の受け金具を固定する場所にもなりますので、腐食は避けたいところです。
勾配屋根の場合はすべて軒先があります。
鬼瓦(おにがわら)
鬼瓦は棟の端部に取り付けられる飾り部品です。もともとは魔除けの鬼面でしたが、雲型や草、魚型などの種類があり、お城や寺社のシャチや鴟尾(しび)は火よけの魚型です。主棟に設置されますが、隅棟に設置されることもあります。
瓦の場合は銅線で固定されていますが、経年変化で緩んできますのでメンテナンスが必要です。板金でもガルバリウム鋼板やステンレス製の簡易的な鬼飾り製品があります。
棟がある屋根であれば設置することができます。
施工事例
水切り工事 松阪市
瓦葺き替え後の板金水切り工事を行いました。
壁との取り合いの雨押え
施工前・施工時・施工後の画像はこちら(case8)
棟笠木取り換え工事 松阪市
棟笠木、劣化により雨漏りのため部分補修工事を行いました。一部撤去の上、新規棟笠木を取り付けました。
棟包みの補修・取り換え工事
施工前・施工時・施工後の画像はこちら(case3)
神社灯篭銅板巻き 松阪市
神社灯篭新設にあたり、銅板巻き工事を行いました。
棟包みなど
施工前・施工時・施工後の画像はこちら(case7)
まとめ
屋根工事で用いられる役物の役割と効果、種類と用途について解説しました。
役物は、屋根の種類によってその目的や役割も変わってきます。板金屋根では防水がメインの役物ですが、瓦の屋根ではその形状や役割ががらっと変わることもあります。もちろん屋根の形状によっても必要な役物の種類・数が変わってきます。代表的な役物は上にあげた通りですが、細かいものを含めるとまだ他にもあります。
ほとんどの役物は、なんらかの防水的な役割とデザインに関わっています。しかし、かなり専門的な内容になりますので、すべて自分で判断するのはハードルが高い作業になります。
役物の防水機能をじゅうぶん考慮し、さらにデザインとのバランスで工事を行う提案をするためにわたしたちのような専門分野の業者がありますので安心してご相談ください。