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ガルバリウム鋼板を使った屋根工事の特徴
ガルバリウム鋼板は、近年屋根材として急成長し、現在は瓦屋根をしのぐほどにシェアを拡大しています。以前は、板金や金属系の屋根材といえばトタンや銅板のイメージが強かったのですが、トタンは錆びやすく、銅板は耐久性は高いものの材料が高いため、一般住宅の屋根には普及しませんでした。
ガルバリウム鋼板は、亜鉛メッキ鋼板(トタン)にアルミを加えることで耐久性を飛躍的に高めた屋根材です。
ガルバリウム鋼板屋根の葺き方には、大きく3種類があります。
縦葺き
縦ハゼといわれるレールのようなジョイントが縦に入っている形になっています。瓦棒、立平、勘合式などと呼ばれ、施工が比較的簡単で手間が少なくて済むため、安価でシンプルな屋根形状に向いています。水の入り込む隙間が少ないため、雨漏りにも非常に強い工法といえます。また、屋根の勾配が緩い場合にも対応できる点も特徴です。
横葺き
横ハゼをメインに屋根材を施工していきます。葺き足が短くなるため見栄えがよく、一般住宅でよく採用されます。寄棟や谷部ができるなど複雑な屋根タイプにも対応できるため、デザインのパターンが豊富です。
勾配は一般的な2〜2.5寸以上で施工できるケースが多くなります。
瓦型
ガルバリウム鋼板のコイルから和瓦型の金型でプレスし成形したタイプのものです。瓦のような見た目で、メーカーによってはかなり精度が高いものもあるため、離れた位置からでは判別できないくらいです。軒先には巴が付いた専用の部材も用意されていることがあります。反面、成型時に延伸した部分の強度が落ちること、小口で固定するビス打ちから雨水が浸入しやすいといった弱点もあります。
カラーについて
ガルバリウム鋼板は塗装の屋根になります。
色については、標準色の設定だけでもブラック・レッド・ホワイト・ブラウン・グリーン・ブルー・レンガ・シルバー・グレーなど数多く揃っています。ブラックやシルバー系は濃いめや薄めのカラー設定があるメーカーもあります。
カラーの微調整やまったく違うカラーを使用したいときは特注で頼むこともできます。
メンテナンスなど
トタンよりは錆びにくいガルバリウム鋼板ですが、経年による塗装の劣化は避けられませんので、塗り替えのメンテナンスが必要になります。
塗装の仕様については、いくつかのグレードに分かれており、単価が高くなるほど塗り替えまでの耐用年数は長くなります。
安いものではウレタン塗装があり、アクリル樹脂とウレタン樹脂を混合して作られています。塗料の中ではもっとも安いのですが、耐用年数は5年から10年以下となり現在はほとんど使われていません。
比較的よく使われている仕様ではシリコン塗装が挙げられます。アクリル樹脂とシリコン樹脂を混合して作られています。安価な割には耐久性に優れ、10年程度の耐用年数があります。
さらに耐久性が高く、よく使われているのがフッ素樹脂塗装です。フッ素樹脂をメインにした塗料で、価格はやや高くなりますが15年から20年という耐用年数があります。ガルバリウム鋼板の屋根でメンテナンスを繰り返すことを長期的に考えるとメリットが高く、人気が上がっています。通常の使用環境であれば、コストをかけただけの効果が期待できます。
ただし、耐久性の高いガルバリウム鋼板とはいえ、周囲の枝やなんらかの物体が飛来して屋根面を傷つけてしまったりすることもあり、その傷口から錆が発生したりすることもあります。また近くに海があり潮風にあたる、あるいは工場の煙突があり、金属にとって有害となる物質が付着するなど周辺環境によっても大きく左右されますので、定期的に屋根面に異常がないかを点検することが大切です。
ガルバリウム鋼板を使った屋根工事の費用
ガルバリウム鋼板の屋根を工事する場合、一般的な住宅の屋根では100万円前後から150万円ほどが多いようです。もちろん、屋根の面積や形状、葺き方、仕様などにより変動します。
ガルバリウム鋼板の屋根材価格自体は1㎡あたり3,000円から6,000円ほどになります。葺き方の違い・厚み・カラー・塗装の仕様など様々な条件によって材料費用に差が出ます。
また、職人さんの作業費用も葺き方や屋根形状、難易度、加工の有無などによって変動します。
あとは、屋根材以外に棟の板金や軒先の納めなど、職人さんの加工による仕事にかかる費用が意外とかかります。既製品ではなく現場に合わせた加工が必要な場合、ある程度習熟したレベルの板金職人さんが必要ですし、現場の形に合わせて寸法を取るなどの型取りが必要であればそれなりの手間がかかります。
さらに、下地やバックアップ材が必要な場合の費用、仮設足場、仮設トイレ、材料や人などの運搬・交通費、排出する廃材処分費、駐車場代などの諸経費も発生します。
新築での施工か、葺き替えでの施工かによっても費用は変わってきます。
仮に新築の工事として、屋根をガルバリウム鋼板で施工すると、縦葺きなら1㎡あたりおおよそ7,000円から9,000円、横葺きなら1㎡あたりおおよそ9,000円から12,000円ほどになります。葺き替えになると、これに既存屋根の解体撤去処分がかかり、おおよそ1割から2割ほど上乗せされます。
一般的なケースで、工事費用が高くなる建物や屋根の条件としては、以下のものがあります。
- 屋根の形状・勾配・・・同じ面積でも、屋根の形が複雑であったり、1階部分に独立した屋根がある場合などは手間と材料ロスがかかりやすく、割高になります。屋根の形状は、片流れ、切妻、寄棟、入母屋の順に費用が割高になっていきます。また、勾配が急なケースでは、屋根面の足場が必要になり、葺き手間もかかるため、割高になります。
- 立地条件・・・建物の周辺が狭かったり、混み入っていると、材料の搬入がしにくく、割高になることがあります。前面道路が広く、敷地に余裕があり駐車しやすいほど作業性が良いといえます。
- 建物の階数・・・建物が3階以上と高くなるほど追加の足場や材料の組立工事費用や搬入搬出費用がかかります。2階建てや平屋であれば割安に工事できます。
ガルバリウム鋼板を使った屋根工事のメリット・デメリット
メリット
耐久性が高い
ガルバリウム鋼板は板金系の屋根材の中でも耐久性が高く、30年は持つと言われています。さらに塗装のメンテナンスを適切に行えば40年以上でも問題ありません。ガルバリウム鋼板は素地である鉄鋼板の上にアルミニウム亜鉛合金メッキを施してあるもので、亜鉛メッキ鋼板の防食機能とアルミメッキ鋼板の長期耐久性を合わせ持っています。アルミニウムの含有量を上げることで高い耐久性を持ち、さらに塗装で保護しています。
耐熱性が高い
ガルバリウム鋼板の素地である鉄鋼板の上にメッキされているアルミニウム亜鉛合金メッキによって、耐熱性はアルミニウム鋼板に近いおよそ300度を誇ります。
耐震性が高い
ガルバリウム鋼板を屋根に採用すると、瓦などの屋根と比べて耐震性が向上します。理由は、軽量だからです。屋根が軽量化できれば、建物の重心が下がり、耐震性は向上します。地震の際には、屋根が重いほど建物は揺れが大きくなり、従って建物が倒壊しやすくなります。特に阪神大震災など直下型の地震の研究によってその耐震性が証明されています。
ガルバリウム鋼板は金属ですが、使用する厚みは1ミリから2ミリ程度と薄くできるため、瓦と比較すると7分の1から8分の1ほどの軽さになります。
また、屋根だけでなく外壁に軽量のガルバリウム鋼板を採用することで、耐震性を上げる効果も期待できます。
加工しやすい
ガルバリウム鋼板は薄いため、金属用のハサミなどでも切断することができ、現場に合わせて加工することが比較的容易にできます。機械成型でもスプリングバック(材料を曲げたときに元に戻ってしまう現象のこと)がなく、成型加工しやすいといわれています。
値段が安い
ガルバリウム鋼板は耐久性や軽量などのメリットを考えると割安と言え、コストバランスに優れています。スレートやアスファルト系の屋根材よりは高いですが、瓦や銅板よりは安く施工できます。
デザイン性が高い
ガルバリウム鋼板の屋根と外壁を使うことで、シンプルでスタイリッシュなデザインの外観に仕上がります。従来の日本家屋では、屋根や建物の形が入り組んで複雑な形になっていましたが、ガルバリウム鋼板の屋根と外壁はシンプルなデザインの家の形にマッチしています。個人的な好みはありますが、かなりの種類のカラーもセレクトできるのでイメージに近い家が作りやすくなります。また、古い家でも物置やガレージなど部分的なリフォームに対応できる特徴があります。
デメリット
断熱性が低い
耐熱性が高いガルバリウム鋼板ですが、金属屋根のため断熱性は瓦などと比較して低く、3分の1程度になります。ただし、最近は内側に断熱材を取り付けた断熱材一体型のガルバリウム鋼板があり、瓦よりも高い断熱性を確保できます。
また当社では、断熱よりも効果が高い「遮熱」の施工も取り扱っております。
超薄型遮熱材「リフレクティックス」についてはこちら(超薄型遮熱工事ページへ)
防音性が低い
ガルバリウム鋼板の屋根は雨音が屋内に響きやすく、防音・遮音性が低いと言われます。瓦に比べ、外の騒音が室内に入り込みやすいデメリットがあります。特に雨音は直接屋根のガルバリウム鋼板に当たって発音されるのでパンパンという高い音になります。ただし、これは対策をしていないガルバリウム鋼板の屋根材を施工したケースでのことで、断熱材付きのガルバリウム鋼板の屋根にすることで外の騒音や雨音はおよそ半分以下に軽減され、瓦とほぼ変わらない程度にまで下げられます。
ガルバリウム鋼板を使った屋根工事の施工事例
三重県松阪市での住宅 板金屋根張替え工事
板金屋根張替え工事のご依頼により施工を行いました。既存の板金トタン屋根にペンキを塗るより張り替えたいとご依頼いただきました。屋根のタイプは切妻です。
既存屋根撤去後、新規コンパネ下地の施工→ゴムアスルーフィング→新規勘合式縦葺き屋根に変更。一部、外壁取り合い水切りと外壁の補修工事も施工しました。
三重県松阪市での住宅新築屋根工事
新築屋根工事です。片流れタイプの屋根にシャンパンゴールドカラーの立平勘合縦葺き屋根を施工しました。
三重県松阪市でのガレージ屋根葺き替え工事
ガレージ屋根から雨漏り対応のご依頼がありました。
既存トタン屋根撤去、下地コンパネ張替え、新規勘合式縦葺き屋根に変更した上で、水切り・笠木・内側外壁張替え工事を施工しました。
三重県松阪市での物置屋根外壁工事
物置新設により屋根と外壁の板金工事を施工しました。屋根は縦葺き施工。
まとめ
ガルバリウム鋼板を使った屋根工事の特徴と費用、メリットやデメリットについても解説してきました。費用については、建物や屋根材の各条件・仕様によって変わるため一概には言えませんが、ガルバリウム鋼板の屋根と外壁の特徴や使用するメリットははっきりしています。
ガルバリウム鋼板の屋根や外壁材は、軽量で耐震性が高く、作業性も向上し、耐久性もあるためコストパフォーマンスに優れた建材といえます。ガルバリウム鋼板を含め、銅板などの金属屋根建材に共通している特徴は、環境にもやさしい点です。
耐用年数を迎え、解体撤去されても焼却や埋設して処分することがありません。金属なので
廃材はリサイクルでき、処分費用がかかりません。買取を行っている業者もあり、金属の種類によってはいくらか換金できる可能性もあります。
短期的な損得や初期コストの考え方を超えて長期的なメンテナンス、イニシャルコストを考えても優れた素材と言えます。