目次
屋根材の種類と特徴
屋根の材料にはたくさんの種類があります。価格が高いものから安いもの、耐久性が長いものから短いものまで様々です。デザインの好みによっても選択肢は広がります。おおまかに言えば、価格が高ければ耐久性などの性能面は高くなり、価格が安くなればそれに伴って性能面は下がっていく傾向があります。
ここでは代表的な10種類の屋根材のメリットとデメリットを徹底的に比較して、それぞれの特徴を解説します。
化粧スレート
メリット
化粧スレートは凹凸のないシンプルな形で、軽量で費用もリーズナブルです。汎用性が高いデザインなので、さまざまな家のタイプに広く対応できます。軽量であるため耐震性が高くなることも利点です。量産も容易で価格も安く、一般的によく使われている屋根材のひとつなので、取り扱っている業者も多いのが特徴です。
デメリット
化粧スレートの厚みは5ミリ前後のものが多く、割れやすいというデメリットがあります。また、塗装されているため、経年劣化による色落ちが原因で古く見えやすくなります。定期的な塗装のメンテナンスが必要な屋根材です。
天然スレート
メリット
天然スレートは天然の岩石を素材としています。そのため塗装のメンテナンスの必要がありません。素材のまま高い耐久性があります。デザイン性も高いため、家に高級感が出せるのが特徴です。
デメリット
天然スレートは自然の素材なので、材料費用・加工・施工費用が高くなります。また、重量がありますので建物への負担も大きく、耐震性は低下します。材料はほとんど輸入しており、日本ではあまり普及していない屋根材のため、取り扱う業者が少ない屋根材です。
日本瓦(和瓦)
メリット
日本瓦は昔から普及している屋根材で、焼いた粘土を素材にしており、高い耐久性が証明されています。塗装も含め大がかりなメンテナンスなしで長期間維持できます。形も細かいところまで自由に成形できるためデザイン性が高く、耐火性、断熱性、遮音性にも優れています。特に和風の家に合うデザインが多いですが、洋風の家でも洋瓦という選択肢があります。
デメリット
日本瓦には産地やグレードがありますが、金額的には比較的高くなります。また、重量が重いため耐震性が低下します。さらにウエーブ型の表面形状はカバー工法には向いていません。よくある事例として、台風や飛来物の影響で瓦がズレたり割れたりといった心配もあります。メンテナンス面では、漆喰の補修や棟の積み替えなどの修理補修が必要です。アスファルトルーフィングなどの防水シートの劣化によっては取り換え工事が必要になることもあります。
セメント・コンクリート瓦
メリット
セメント・コンクリート系の瓦は日本瓦よりリーズナブルで、デザインの種類もバリエーションが多くなっています。また、不燃性の材料が使われており、遮音性、断熱性も高くなります。
デメリット
塗装品のため、塗装のメンテナンスが必要になります。さらに、重量もあり、日本瓦と同じく、耐震性の問題、台風や飛来物の影響で瓦がズレたり割れたりといった心配、カバー工法に向かないといったデメリットが共通しています。また、似た屋根材であるスレートがより軽量ということもあり、需要が低下しているため販売も少なくなってきています。
トタン
メリット
トタン屋根は隙間ができにくいため防水性が高く、軽くて耐震性も高いメリットがあります。さらに施工性も良くて費用もリーズナブルです。
デメリット
薄いので防音性が低く雨の音がやかましいといわれます。また、断熱性も低く、夏は暑くなりやすいため居住スペースには向いていません。塗装のメンテナンスが必要でサビが出やすいため最近は需要が下がっています。
ガルバリウム鋼板
メリット
ガルバリウム鋼板は軽量で耐久性が高く、耐震性も上がります。トタンほど安くはありませんがトタンの弱点だった錆びやすさが改良されています。標準カラーのバリエーションが多く、好みのカラーをセレクトできます。葺き方によっては緩い勾配にも対応できる利点があります。耐火性にも優れ、近年は人気の屋根材としてシェアが拡大しています。
デメリット
薄くて軽い分、遮音性や断熱性が低くなっています。遮音シートや断熱材を取り付けることでデメリットを改良することができますが、別途費用が必要になります。耐久性の維持のために塗装のメンテナンスが必要になります。
ジンカリウム鋼板(自然石粒付ガルバリウム)
メリット
ガルバリウム鋼板の表面に石粒を吹き付けたジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板のメリットと同じく軽量で耐久性が高く、耐震性も上がります。また、ガルバリウム鋼板に比べ、遮音性、断熱性が高くなります。さらに塗装のメンテナンスが不要で、サビにも強くなっています。
デメリット
価格が高く、あまり普及しているとはいえません。断熱性は低いので、別途断熱材が必要になることもあります。また、吹き付けた石粒が落ちてくることもあります。塗装のメンテナンスが不要な反面、塗装が出来ないため、素材の寿命がくれば葺き替えなどの大がかりな工事が必要になります。
アスファルトシングル
メリット
アスファルトを表面に吹付けコーティングしたアスファルトシングルは、軽量で耐震性もよく、費用もリーズナブルです。柔軟で加工もしやすいため施工性が良く、防水力も高いため入母屋タイプや谷部があるなど複雑な屋根形状にも対応できるのが強みです。
デメリット
耐久性は低く、比較的短期間で塗装のメンテナンスが必要になります。強風で剥がれやすく、表面が乾きにくいためコケや藻が繁殖しやすい弱点があります。また、薄いので断熱性も低いです。
銅板
メリット
銅板は素材の耐久性が高く、塗装の必要がないため長期にわたりメンテナンスフリーが期待できます。薄く軽量なので耐震性も上がります。施工後20年から30年で表面に緑青という酸化被膜ができ、より防水・耐水性が上がります。解体撤去の際も高級金属なので買取りが可能です。
デメリット
材料が高いため、費用が高くなります。「酸性雨に弱く穴があく」というイメージがありますが、それは間違ったイメージで、実際には瓦の釉薬と相性が悪く電蝕(電気化学的腐蝕)が発生し穴があきます。そのため、電蝕が発生する瓦や他の金属などと併せての使用はできません。また、遮音性や断熱性は低く、ハゼなどの施工技術によって耐用年数が左右されやすい点にも注意が必要です。
陶板
メリット
日本瓦を軽量化したイメージの陶板屋根は、日本瓦より軽く、塗装のメンテナンスが不要で、耐久性も高いです。日本瓦のような凹凸も少なく、すっきりして高級感もありシンプルなデザインです。
デメリット
日本瓦よりも価格が高くなります。また、板金や金属系の屋根材に比べると重いため、耐震性の問題もあります。
屋根材を徹底比較
10種類の屋根材のメリット・デメリットを比較してきました。次に、「価格」「施工費」「耐用年数」「デザイン」の4つの項目でおすすめ屋根材を取り上げ、さらに総合判断での評価をしてみましょう。
価格で選ぶなら?
屋根材を価格で選ぶなら、リーズナブルな化粧スレート、セメント・コンクリート瓦になります。価格が安い分、初期費用をおさえることができます。
ただ、10年前後で塗装メンテナンスが必要になるため、比較的短期でメンテナンス費用がかかってきますし、葺き替えまでの耐用年数も20年から30年と短めになります。
施工費で選ぶなら?
屋根材を施工費で選ぶなら、施工性が良いアスファルトシングル、トタンになります。軽量で加工もしやすく、施工費を割安にできます。
ただ、「価格で選ぶ」と同じく、10年前後で塗装メンテナンスが必要になり、比較的短期間でメンテナンス費用が発生しますし、葺き替えまでの耐用年数も10年から30年となります。
耐用年数で選ぶなら?
屋根材を耐用年数で選ぶなら、もっとも長期の耐用年数を期待できるのが銅板、次いで日本瓦、となります。ただし銅板は材料費が高く、施工によっては早くハゼが潰れてしまうなど取扱いに注意が必要で職人のスキルが重要になります。日本瓦も費用が高くなり、重量が重いため耐震性に問題があります。銅板や日本瓦に比べると耐用年数は落ちるもののコストバランスが優秀なガルバリウム鋼板という選択肢もあります。
デザインで選ぶなら?
屋根材をデザインで選ぶなら、デザイン性の高い天然スレート、陶板があります。天然スレートは高級感とオリジナリティーの高いデザイン、陶板は高級感とシンプルなデザインといった特徴があります。どちらもデザイン性に加え耐久性も高いですが、価格が高くなります。
総合評価
総合的に考えると、ガルバリウム鋼板と日本瓦が評価できそうです。
価格や施工などの費用面では、化粧スレートやアスファルトシングルなどを挙げましたが、初期費用は低く抑えることができるものの、メンテナンスサイクルが短く素材の耐久性を考えるとコストパフォーマンスが高いとはいえません。
ガルバリウム鋼板は塗装メンテナンスが必要ですが、金属屋根としては素材の耐久力が高く、軽量で耐震性も高くなります。葺き方のパターンも多様で、「デザイン性は低いもののリーズナブルに施工できる葺き方」、または「費用は高めだがデザイン性が高い葺き方」をセレクトできます。
日本瓦は重量があり耐震性の心配はありますが、大きなメンテナンスなく長期間維持できるのはやはりメリットです。デザイン性も高く、日本家屋だけでなく洋風住宅にも広くマッチさせることができます。
まとめ
10種類の屋根材のメリットとデメリットを徹底比較して、おすすめの屋根材を考えてきました。
基本的には、初期費用を安く抑えて施工できればメンテナンスでそれなりの費用が必要になり、初期費用にコストをかければメンテナンス頻度が少なくて済むという傾向があります。
それらを考えると、屋根材を選ぶ判断には建物の築年数や寿命がポイントになってきます。たとえばすでに築年数が経っている家で葺き替え工事をするという場合、建物の寿命より屋根の寿命のほうがあきらかに長くなる場合は、コストが無駄になってしまう可能性があります。反対に新築や良い木材を使って建てられた住宅などは、寿命が長いだけに耐久性の高い屋根が適していると言えます。
また、葺き替え工事の時の解体コストもあります。瓦系の屋根は産業廃棄物になってしまうため解体処分に手間も費用もかかります。金属系の屋根はリサイクルが可能なケースが多く、業者が買い取ってくれることもあります。今後ますます環境的な意識が高まることを考えても無視できないポイントといえます。
その意味では、総合評価で銅板を入れてもいいくらいです。銅板の屋根は神社仏閣などではよく採用されていますが一般住宅ではまだ少ないのが現実です。軽量で耐久性も高い銅板は高価ですが、解体時の買取り金額は金属の中でも飛び抜けて高く、寿命の長い建物にはおすすめできる屋根材です。