目次
屋根工事の主な施工手順
まずはじめに、屋根の葺き替え工事を想定した主な施工手順を紹介します。
足場設置
屋根工事は、まず仮設足場の設置から始まります。
トラックで搬入してきた足場材料を人力で建物の四方を囲むように組み、屋根の軒先ラインのいくぶん下に踏板が並ぶ高さに設置します。昇降用の階段や、飛散防止用のメッシュシートなども設置し、さらに勾配などによっては屋根面にも足場を設置することもあります。屋根形状によっては、いったん組んだ足場を工程に合わせて部分的に組み替えることもあります。
鉄パイプを組み上げていく作業になりますので、足場同士がぶつかったり叩いたりする「カンカン」といった高い音が発生します。
既存屋根の撤去
既存の屋根材を解体、撤去し、運搬、処分します。
人力で屋根材を解体してトラックなどに積み込みます。棟や鬼瓦などの役物も同様です。ロケーションによっては一度レッカーなどの重機を介して降ろすこともあります。また、下地も交換予定の部分まで同様に解体撤去します。
一連の解体撤去作業の期間には、ホコリが舞ったり音が発生したりすることがありますし、屋内にも土ぼこりやゴミなどが落下することがあります。
瓦の場合は重量もありかさばるため、手間も費用も掛かります。板金は比較的容易で、素材の種類によっては買取りしてもらえることもあります。
下地の施工
新規の下地を施工します。
一般的には野垂木の上に野地板を張ります。野地板の厚みは、新規の屋根材の仕様などに合わせて決まります。棟や軒先などの役物の下地も施工しますが、次項の防水シートの施工後に行う箇所もあります。
防水シートの施工
野地板の施工が終わったら、アスファルトルーフィングなどの防水シートを施工します。
上から下へ流れる水の流れを考慮し、水上側のシートが必ず水下側シートの上に重なるように注意が必要です。谷部や隅部がある場合はシートを重ねるなど雨仕舞(雨水を上手く誘導し、雨樋や地面などに受け流す)を考えて施工します。
新規屋根材の設置
防水シートの上に、新規の屋根材を施工します。
使用する屋根材に合わせて適切な施工方法・手順が決まっています。量産品に多くみられる成形加工品の場合は外部で加工してから搬入します。端部など調整が必要な部分は、現場で加工をすることもあります。特に棟や隅部では無理な加工や納めにならないよう注意が必要です。
板金施工
新規屋根材の設置後、もしくは同時進行で施工します。
軒先やケラバ、棟などの包み、各所水切りを施工します。基本的には加工を伴う工事になることが多く、使う材料数の割には時間がかかります。雨樋を同時に施工することもあります。
足場解体
すべての工事が終わり、施工者検査や施主検査、必要な修正も終了すれば、仮設足場を解体します。この時も足場材を外していく音が発生します。
足場が撤去できれば工事は終了となりますが、家の周りには釘やビスなどが落ちていることがありますので、業者が最後にひと通り掃除をしているか、確認したほうがいいでしょう。
手抜きされないために!チェックすべき施工手順とは?
見積通りの材料が使用されているか
本当に約束した材料で作ってくれるのか、と疑いだしたらキリがなくなってしまいますが、心配にはなるものです。工事を依頼しているということは基本的には信頼して任せているということですし、信じたいですよね。
しかし、残念ながらごく稀には見積書に記載の材料と違うものが使用されてしまうことがあります。屋根材の形やカラーなど、見た目で分かりやすいものであれば「違うぞ」となるのですが、たとえば材料の厚みは見た目にはほぼわかりません。実は仕様書や見積書と違うものが使われていた、というトラブルは不具合が起きたときに初めて知る、ということもあります。
公的な工事や新築などのケースでは倉庫や加工場で材料検品というチェック工程が作られることもありますが、通常の住宅の屋根工事ではほぼありません。材料が現場に搬入された際に、確認しておきたいところです。具体的な例を挙げると、材料の梱包には製品の規格が印刷されています。名称、厚みを含めた寸法などがシールで貼られていることもあります。よく分からない場合は現場の職人さんに聞いてみてもいいでしょう。板金屋根の場合は、厚みがたとえ0.1ミリ違っても大きな違いがあります。耐久性も変わりますし、単価も変わってきます。
悪質な業者が作為的に不正をするケースは論外ですが、優良な施工業者でも、発注ミスで違う製品が現場に入ってしまうことがないとはいえません。現場にいる人は細かく仕様を認識していないこともありますので、手元に来た材料でそのまま施工してしまうこともあります。もし間違いがあれば、ただちに報告しましょう。
見積通りの納期で進んでいるか
契約の時点までには予定の工期が示されているはずですので、工程表どおりの施工手順になっているか、工期に遅れがないかは書類を確認すればわかります。
屋根の工事は天気に左右されますので、どうしても遅れることはありますが、ある程度の予備日は見てあります。もしそれ以上遅れる可能性が出てきた場合は、ほとんどの業者はちゃんと報告・相談をしてくるはずです。
ただ、引っ越しやなんらかの行事などで納期をズラせない場合は、施工業者にあらかじめ伝えておかなくてはなりません。業者にもよりますが、複数の現場が同時進行している場合、状況に合わせて職人さんを配置し、応援に行かせるなどするため、他の現場の手が止まることがないとはいえませんし、天候などによる遅れの場合は、他の現場も同じ状況になっている可能性が高いといえます。
工期の遅れが問題になる場合は、できる限り早い段階で施工業者へ伝えましょう。
防水シートが丁寧に貼られているか
アスファルトルーフィングなどの防水シートは屋根材のすぐ下になります。僅かながら浸入した雨水を食い止めるシートになります。防水シートが破れていたり大きく皺が寄ったりしていると、水が溜まり雨漏りの原因になるだけでなく、傷みの進行も早くなります。
防水シートの固定はタッカーという、大きめのホチキスの針でされることが多く、その固定箇所が少なすぎたり、逆に1か所に集中しすぎたりするのも良くありません。
また、水下側から貼っていかないとジョイントの重ね部分から雨水が入ります。重ね幅に充分余裕があるか、必ず水上側が上に重なっているかチェックしたいところです。
板金工事が雑でないか
板金工事の場合は、屋根面は比較的キレイに仕上がりますし、雑だと目立ちます。
ポイントとなる箇所は、棟などの役物や水切りです。これらは加工部分になるので、部材の寸法や角度が合っていないと納まりが雑になることがあります。
見た目で分かりやすいのは釘とコーキングです。板金を固定する釘やビスは、雨仕舞を考えてほとんど見える部分に打つことはありません。また、コーキングは隙間を埋めるために使うことはありますが、あまりにも大きい隙間や釘の頭などを埋めるために使っていれば、雑な施工になります。釘からは僅かながら雨水が入りますし、コーキングの耐久性は数年なので、トラブルにもつながりやすい部分と言えます。
まとめ
屋根工事の主な施工手順と、手抜きされないためのチェックポイントを解説してきました。
信頼した業者・誠実な業者に任せても、人間のやることですからミスもあります。自分でできるチェックをすることは、業者を信頼していないということではありません。自分が納得できる工事のためにすることで、気持ちよく支払いもでき、住み続けることもできるはずです。